ペットボトル水の普及の歴史と需要・供給の流れ
日本でペットボトル入りの飲料水(ミネラルウォーターなど)が
本格的に普及し始めたのは、1980年代以降です。
それ以前では、水道水を直接飲むのが一般的であり
飲料水を購入する文化はほとんどありませんでした。
しかし、ライフスタイルの変化や
安全性への意識の高まりとともに
ペットボトル水の市場は急成長していきました。
1. 日本のペットボトル水の普及の歴史
① 1970年代以前:水道水が主流
• 日本の水道水は世界でもトップクラスの品質を誇り
ほぼ全国で安全に飲むことが可能でした。
• そのため、一般家庭で「水を買う」文化は存在しなかった。
• 一部の高級ホテルやレストランでは
ガラス瓶入りの輸入ミネラルウォーターが
提供されていましたが、当時一般消費者には浸透しませんでした。
② 1980年代:ペットボトル水の登場
• 1983年:「エビアン」が
日本に初めて本格輸入され、高級品として流行。
• 1980年代後半:国内メーカーが参入し
日本の天然水を使ったペットボトル水が
発売されるようになりました。
• 1989年:日本国内の「ミネラルウォーター類」の
規格が制定され、市場が拡大。
③ 1990年代:健康ブームと災害対策で需要拡大
• 1990年代:健康志向の高まりとともに
ナチュラルミネラルウォーターの人気が上昇。
• 1995年:阪神淡路大震災をきっかけに
防災備蓄用としてのペットボトル水の需要が急増。
• コンビニ・自動販売機の普及により
「手軽に買える水」として定着。
④ 2000年代:生活必需品化と多様化
• 2003年
「アルカリイオン水」や「シリカ水」など
機能性を持たせた水が登場。
• 2005年以降
「エコ」「軟水・硬水の選択」「産地へのこだわり」など
多様なニーズに対応した製品が増加。
• 2011年
東日本大震災を機に、安全な水の確保が重要視され
家庭や企業での備蓄需要が拡大。
• 2020年以降
新型コロナウイルスの影響で「マイボトル利用」が
推奨される一方、手軽なペットボトル水の需要も継続。
2. ペットボトル水の需要と供給の流れ
① 需要の変化(なぜペットボトル水が求められるのか?)
• ライフスタイルの変化:外出先での手軽な水分補給が求められるようになった。
• 水道水への不信感:塩素臭や安全性の問題から、ボトル入りの水を選ぶ人が増加。
• 健康・美容ブーム:ミネラル成分やpHバランスを意識する人が増え、シリカ水やアルカリイオン水などの需要が拡大。
• 防災意識の高まり:災害時の備蓄水としての需要が増加。
② 供給の流れ(どのように生産され、市場に出るのか?)
1. 採水地の選定:
• 地下水、湧水、天然水など、ミネラルバランスが優れた水源を確保。
• 一部の製品は「ろ過処理した水道水」を原料としている。
2. 製造・ボトリング:
• 採水した水をフィルターでろ過し、加熱殺菌や紫外線殺菌を行う。
• ペットボトルに充填し、密封。
3. 流通:
• スーパー・コンビニ・自動販売機・オンラインショップなど
多様な販路を通じて消費者に届く。
3. 日本のペットボトル水の課題
① 環境問題(ペットボトルごみの増加)
• 日本国内では年間約230億本のペットボトルが消費され、その多くが飲料用。
• リサイクル率は高いが、分別されないゴミや海洋プラスチック問題が深刻化。
• エコ対策として、「リフィル(詰め替え)」や「マイボトル利用」の推奨が進められている。
② 水の安全性と品質管理
• 一部のペットボトル水から、PFAS(有機フッ素化合物)などの有害物質が検出されたという報道もあり、安全基準の強化が求められる。
• 国による水質基準はあるものの、ブランドごとの「水質検査情報の透明性」に課題がある。
③ 価格と消費行動の変化
• ペットボトル水は、水道水に比べて約500~1000倍高い。
• 消費者の意識変化により、「ウォーターサーバー」や「浄水器」へのシフトが進んでいる。
4. これからのペットボトル水の未来
✅ エコ対応:「紙パック水」や「リユース可能なボトル」が増える可能性
✅ 機能性の強化:美容・健康を意識した「高機能水」市場が拡大
✅ サステナブルな水源の確保:環境負荷を抑えた採水方法が求められる
ペットボトル水の市場はこれからも続くと考えられますが、環境負荷の低減や安全性の向上が求められる時代に入っています。
まとめ
日本のペットボトル水は、1980年代の輸入品ブームから始まり、災害対策や健康意識の高まりとともに普及しました。しかし、環境問題や水質の安全性に対する懸念が高まりつつあり、今後は「持続可能な水の選択」が重要なテーマとなるでしょう。